概要
pythonの環境構築に悩む人たちのために、環境構築についてまとめておきます。
目次
- 概要
- はじめに
- 覚えておいてほしい大切なこと
- pythonをやるのに向いたOS
- 生のシステムのpythonを使う(システムに直接インストールしてそのまま使う)
- パッケージマネージャについて
- 仮想環境編
- まとめ
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はじめに
pythonは最近よく流行っているスクリプト言語ですが、残念ながら環境構築のとっつきづらさは他の言語の比ではないと思います*1。初心者が変な環境を作ってトラブルの元になる・・・というのもよくあることなので、この際まとめておこうと思いました。
さて、まず大前提として、メインで使うpythonはpython3系にします。今からpython2系を学習する意味はほとんどないからです。
また、この記事では環境構築に際して使う各ツールの操作手順については述べません。それぞれの構築方法についてご自身で検索していただければ良いと思います。日本語Web圏におおむね十分な情報があります*2。
覚えておいてほしい大切なこと
「自分でよくわからない/把握できない環境は作らない」
これが基本です。
ネットには無責任に「○○が良いですよ~」と書いてしまう人はたくさんいます。それを真に受けて、使い方もよくわからないツールを落としてきて入れ、記事に書いてある操作手順通りにインストールし、インストールはできたけど使用開始とほぼ同時に早速ハマる……というどうしようもないことをする初心者の方も一定数います。
むやみにツールを入れないでください。入れるなら、入れる前に目的と使い方くらいは理解しておきましょう。そうしないと扱いきれません。
実際、何も知らない初心者が、ネットの記事に書いてあるコマンドをコピペしてpyenvやanacondaを導入し、扱いきれなくて挫折する……という悲劇がたくさん起きています。
pyenvが必要かどうかフローチャート - Qiita
Pythonの環境管理ツール良し悪し - Zopfcode
python import errorに関連する質問・回答の検索結果(1ページ目)|teratail
できるだけそういう事態になりそうな展開は回避し、単純な環境で構築してから他のツールに手を出した方が、失敗しづらいはずです。
pythonをやるのに向いたOS
ご存知の通り、pythonはマルチプラットフォームなスクリプト言語です。しかしどうしても、OSによって向き不向きがあるようです。
windows
おすすめ度:☆3
率直に言って、おすすめできません。windowsだと余計な苦労が増えます。上級者は普通に使いこなせると思いますが、初心者向けではありません。
それでも一時期に比べれば、wheelで入るライブラリも増えたし、UNIXに依存するライブラリというのもないので、簡単になった方です。エラーメッセージが出たときに、根気よく検索して対処できる人向けです。
Bash on Ubuntu on Windowsは使ったことがないのでわかりません。ごめんなさい。
Mac OS
おすすめ度:☆2
これも、あまりおすすめしません。使い勝手自体はwindowsよりはマシですが、Web情報はwindowsより少なかったりします。Mac特有のハマり方があるので*3、少ない英語情報を必死に探って自己解決できる人でないとしんどいと思います。
初心者は避けた方が無難です。「pythonでプログラミングを勉強したい!」と思ったとき、いきなりMacを買う理由はないということです。
linux系
おすすめ度:☆4
windows, macよりはおすすめです。初心者はlinux系を使えば良いと思います(pythonをやるついでにlinuxの勉強も出来て一石二鳥です)。ただ、まったく経験がないと敷居が高いのも事実です。
windowsマシンの上に仮想マシン(後で述べるpython仮想環境とは別物です)で入れれば、環境ぶっ壊しちゃっても作り直せば良いだけで、とても気楽です。
linux系にはディストリビューションがいろいろありますが、デファクトスタンダードはubuntuです。このことは、「ubuntu python 環境構築」とか検索すれば幾らでも記事が出てくる、ということを意味します。他のディストリビューションはそこまで強くないので、手を出すのは中級者以上になってからで良いと思います。
その他のOS
そんなの使いたがる人はこの記事を読んでいないと思いますが・・・。
FreeBSD使いの人はいるかもしれませんね。頑張ってください。応援しています。
Android、iPhoneなどのスマホ・タブレットに入れたがる人も時々います。対応した実装もあるといえばあるのですが、あまり使いやすいものではありませんから、素直にノートパソコンを買った方が有利です。
Web上実行環境
OSではありませんが、実はWeb上でpython(に限らずいろいろな言語)を実行できるサービスがあります。たとえばWandboxなんてどうでしょう。
こういった環境は、勉強とか、ちょっとした動作チェックには重宝します。それ以上でもそれ以下でもないのですが、とりあえず取っ掛かりとしてはありです。簡単に試してみたい、というときはここに入門書の内容などを打ち込んでいくと良いと思います。
結論
今使ってるwindowsマシンにVirtualBoxかVMWare Playerを落としてきて、ubuntuを入れましょう。
生のシステムのpythonを使う(システムに直接インストールしてそのまま使う)
さて、ubuntuを入れた方はターミナルで「python」と打つといきなりpythonが立ち上がると思います。今どきのUNIX系OS(事実上linux+Mac)であれば最初からpythonが入っているので、それが使える訳です。
これをそのまま使う、というのは選択肢の一つです。ただ、2018年6月現在では、まだシステムデフォルトのpythonがpython2系のシステムがほとんどだと思います。できればpython3系を使いたいので、これはボツです。もしデフォルトがpython3系のシステムにあたったら、しばらくはそれを使って基本的な構文や機能の勉強をやれば良いと思います。
システムのpythonがpython2系だけどpython3系を使いたい、という場合、システムにpython3をインストールすることができます。この場合、python2を消したり、置き換えたりはせず、python2とpython3を共存させるようにするのが無難です。python2はシステムの中で使っているプログラムがいろいろあるので、消してしまうとOSがまともに動かなくなります。
また、python2系がデフォルトだけど、python3系も一緒に入っている、というシステムもあります(最近のubuntuはそうだったはずです)。これはしめたもので、そのまま使えばインストールの手間が省けますし、インストールで事故る確率も減らせます。ただし、pipなどは自分で入れてやる必要があったりするようです*4。
おそらく、python2とpython3が共存する環境では、「python」とターミナルに打ち込むと平然とpython2が立ち上がってくるはずです。そういうときは、慌てずに「python3」と打ち込みます。そうすると(ちゃんとインストールされていれば)python3が立ち上がるので、使うことができます。
また、パッケージマネージャのpipも、(インストールされていれば)「pip」と打つとpython2に対応するpipが立ち上がってくるはずです。同様にpip3と打てばpip3が立ち上がるので、こちらを使います。パッケージマネージャについては次章で詳しく述べます。
パッケージマネージャについて
パッケージマネージャは、主に外部ライブラリなどを管理するためのツールです。
2018年6月現在では、間違いなくpipがスタンダードです。大抵のものがpipで入ります。というか、pipで入らないものは他のパッケージマネージャでも扱えないので、pip以外を使う意味がまったくありません(というか、そもそも存在しているの? レベル)。
例外として、anaconda(あとで述べます)を使う人はcondaというanaconda独自のツールを使う必要があります。
また、pipで扱えない、ソースコードで配布されているだけのパッケージも存在します。そういうものはsetup.pyなど*5を使って環境に入れます。大抵はパッケージのreadmeとかで親切に説明してくれているので、その通りにやれば良いです。
さて、pipと一口に言っても、実はコマンドの打ち方はいろいろあります。
もしインストール手順などで「pip install ○○」と指示されていたら、それは「自分の環境に合った方法でpipを使って入れろ」ってことです。この通りコマンドを打っても、ほぼ入りません。
以下に大まかな傾向を書いておきますが、あくまでも参考情報です。極論すれば、pip自体のありかがわかって、権限の問題が解決できれば、コマンドの細かい違いはどうでも良いことです。でも、使い分ける上ではこれらは重要です。
- sudo pip
これは普通はシステムのpythonにインストールする場合です(そういう認識で構いません。普通にaptとかでインストールすると権限が必要な場所に入ると思います)。
sudoはunix系のコマンドであり、windowsだとsudoはないので、なにか違う方法で同様のことを実現する必要があります*6。また、python2とpython3を使い分けていれば「sudo pip3」というのもありえます。
- pip
ただのpip。仮想環境を使うと、これで済むと思います。逆に、仮想環境を使っていないとただのpipで済む場面はあまりないとも言えます。
- pip2、pip3
システムに異なるバリエーションのpythonを複数インストールして、仮想環境等を使わずに使い分ける場合、区別のために数字付きのpipコマンドを使うことになります。インストール先にもよりますが、sudoを付ける必要があるかもしれません。また、python3.5とpython3.6を使い分けたい、という場合、pip3.5とpip3.6を使い分けます。面倒くさいですね。
自分が使っているpythonに入れるにはどれを使えば良いのか、把握しておきましょう。
「pipでインストールしたのに使えません!」
「違うpythonに入れてるみたいですね!」
というやり取りは、割と頻繁に目にします。
仮想環境編
この章はあんまり書きたくはないのですが・・・。
システムのpython(インストールしたままのpython)を使うと、ミスって環境をぶっ壊してしまうリスクがあります。管理もいろいろ面倒です。そこで、仮想環境を使うと良いですよ、ということがいろいろなところで言われています*7。
ぶっちゃけた話、仮想環境を作るのは初心者にはコストが高いです。ネットで調べてその通り打ち込むだけといえば、その通りなのですが、それでもけっこうハマりどころがあります。なので、入門書程度の内容をやっている間は、仮想環境は要らないと思います。pipでライブラリをがつがつ入れたくなったときに、検討してみてください。
また、げんなりすることに、仮想環境は何種類もあります。互換性もないし、使い方も違うしで、どれを選べば良いのかよくわかりませんよね。安心してください。ある程度定石があります。
定石
venvかvirtualenvのどちらかを使う。
これで良いと思います。それぞれについては追って説明します。
venv
おすすめ度:☆5
最近のスタンダードです。が、実は次節のvirtualenvがpython3.3で標準モジュールとして取り入れられたものと解釈して、ほとんど間違いありません。
venvはシステムにインストールされているpython3.3以上に依存します。というか、python3.3以上のpythonが環境に入っていれば、自動的に使えます(よほど変な環境構築をしていない限り)。なので、最近のubuntuならこれを使えば良いですし、自分でpython3を入れてvenv、というのもありです。
特に使いづらいとかもなく、普通に使えます。
virtualenv
おすすめ度:☆4
一昔前のスタンダードでした。venvがpython3.3に入って以降は存在意義が薄くなっていますが、システムにpython2系しかなく、というかそもそも使うのがpython2系だけです、みたいな状況で使うのは今でもありです。
これは外部ライブラリなので、pipでインストールする必要があります。
また、venvでできなくてvirtualenvでできることとして、pythonインタプリタ本体のバージョンを切り替える操作があります。複数のバージョンを共存させたい場合は、システムのpythonにvirtualenvを入れ、あとは好きなところに複数バージョンのpythonを入れ、仮想環境を作るといった使い方ができます。
pyenv
おすすめ度:☆3
一昔前にちょっと流行っていました。未だに記事をたくさん見かけますが、今から使いたいかと言われると、正直イヤです。venvでいいと思います。
長所はpythonに依存しないことです。そのかわり、シェルスクリプトに依存します。当然windowsでは動きません。これを欠点と呼ぶかは悩みますが(記事の最初でwindowsは斬って捨ててる訳だし)、とにかくそういう特徴があります。
anaconda
おすすめ度:☆3
anacondaは有名ですね。環境構築の手間が省けて、統計や機械学習用のライブラリまで丸ごと入れられる、という奴です。しかし、個人的には☆3を付けます。
anacondaの最大の利点は、condaという独自のパッケージ管理システムを持つことで、オリジナルのpipと比べてもパッケージのインストールや仮想環境の操作が容易であることです。
一方、欠点は、パッケージ管理周りがpipとはまったく別物なので、anaconda独自のハマりどころがたくさんある、ということです。ハマると面倒ですし、ちょっとマイナーな話題だとWebに情報があるかも怪しい、githubにissue上がっててもcloseしないまま何ヶ月も放置されてる、といった具合です。
端的にいうと、確かにanacondaの開発は頑張ってはいるけど、パーフェクトというほどの完成度ではないので、anacondaを使うと問題がややこしくなるケースというのが一定数存在します。どう判断するかは人によりますが、私は最初からpipを使った方がマシだと思います。
それでも、環境構築のことは何も知らない人が、手軽に統計とか機械学習を試すためにあると思えは、anacondaは弁護できます。実際、numpyとかscipyとかcythonとかmatplotlibとかsklearnとかを自分でインストールしようとすると、それはそれで一筋縄ではいかないので、「その辺のライブラリをさっさと使いたいんです、授業が/研究が/研修が済んだらもうpythonなんか触らないんです」という状況であれば、anacondaはありです。
逆に、長くpythonを使い続ける、いろいろなライブラリを入れたりして愛用していく、のであれば、やめた方が良いと個人的には思います。多少手間がかかっても、自分で普通に環境構築して、pipを使ったインストールに慣れた方が良いです。
申し訳ありませんが、そういう認識です。
その他の仮想環境
採点はしません。
virtualenvwrapper
名前の通り、virtualenvのラッパーです。使い勝手が改善されているらしいですが、使ったことがないのでわかりません。ごめんなさい。
生virtualenvを使いづらいと感じたことは特にないので、これを使うならvirtualenvで良いと思います。まあ、最終的には好みの問題ですが、多少コマンドが打ちやすくなるとかのために不安要素を増やすかというと、Noです。
pyenv-virtualenv
pyenvでvirtualenvwrapperに相当するものです。これも恐らく要らないと思います。
conda
これはanacondaの管理ツールです。「conad install ○○」とかやって使うそうです。見た目はpipっぽいですが、中身はまったくの別物。
pipenv
これは比較的新し目のツールです。pipとvirtualenvを統合したという、ちょっと触れ込みだけでは想像がつかないもの。まだ試していませんが、そのうち試してみます。
結論
venvかvirtualenvのどちらかを使う。
最初に言いたいことはまとめたので、特に追加で言うことはないです。
まとめ
この記事に書いてあることをどこまで信頼するかは、あなた自身で決めてください。私は何も保証しません。それはあなたの責任です。
この記事の内容自体はそんなに外していないとは思います。しかし、人によって考え方の違いもありますし、環境構築に正解なんてありません。究極的には動けば良いのです。せいぜい一つの指針にしてください。
あと、間違いにお気づきになられた識者の方は、ご遠慮無くご指摘いただけると大変助かります。
*1:もちろん、探せばもっとひどい言語はあるだろうけど。スクリプト言語の平均よりは明らかに悪いという程度の意味
*2:信用に足る記事があるかはまた別ですが・・・新し目でまともそうなものを選ぼう、としか言えません
*3:というかライブラリとかがMacまでしっかり考えて作られていない・・・Macのパッケージマネージャもいまいちpythonに優しくない・・・
*4:参考:Ubuntu環境のPython - python.jp
*5:distutilsなどという。参考:distutils --- Python モジュールの構築とインストール — Python 3.7.4 ドキュメント
*6:もしかしたらただのpipかもしれないし、管理者権限でやる必要があるかもしれない。インストール先等で変わってきます
*7:仮想環境とは何ぞや、という基本的なことについてはこちらを参照:仮想環境 - python.jp